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 俺の住んでいるコーポ瀬戸川の二〇三号室に、やはり何かがあると怪しみ出したのは、不動産屋主任の岡村の態度が脳裏に浮かんできてからだ。


“あの部屋には何かしらの曰くが付いてる”


 ハンドルを握って運転しながら、俺はいぶかしむ気持ちを覚えた。


 だが、俺自体が今すぐにあの場所から引っ越せるとは思っていない。


 それに俺もそのことを気に掛けながらも、いずれは霊が退散してしまうだろうぐらいに考えていた。


 つまり俺自身の見立てが甘かったのだ。


 俺は武者の霊が放っている霊気を感じ取れなかったのだが、里夏は案外霊感が強いらしい。


 車の中で霊のことには一切触れなかったが……。


 車が海岸へ向けて走り出す。


 空は晴れていて、関東は梅雨に入る頃だった。


 俺の運転する車は順調に走り続ける。