20
 俺は日付が一つ変わった午前零時過ぎに、店のバーテンダーに、


「そろそろ帰るから」


 と言った。


「ありがとうございます」


 バーテンダーが店の従業員に飲み代を清算させるよう頼み込む。


 俺がレジで金を支払うと、里夏も財布から自分が飲んだのに掛かったお金を出した。


 そして彼女はスゥーと出入り口まで歩いていく。


 香水が汗や皮脂と混じり合ったときの独特の匂いがする。


 俺がそんな里夏の手に自分の手を繋ぎ合わせ、


「今から自宅に帰るだろ?」


 と訊いてみた。


「ええ」