Faylay~しあわせの魔法

「私は、フェイを信じてる。フェイは、負けないよ」

そう力強く言ってからフェイレイに視線を向け、ふわりと微笑みかけた。

「……駄目だ、リディル」

その微笑の意味に気づき、フェイレイはリディルを止めようとした。

身体の全神経がランスロットの支配下にある今、どう頑張ってもフェイレイの思うようにはならない。

今もリディルの呪縛から逃れようとしているランスロットはフェイレイを操り、ぐぐ、と腕を動かそうとしている。

それを止めているリディルは、微笑を浮かべながらも苦しそうだ。

リディルを苦しめていることが分かっているのに、フェイレイはどうすることも出来ない。

「大丈夫」

「駄目だって」

今解放されたら、間違いなくリディルを斬ってしまう。それはフェイレイが最も望まない結果だ。

それでもリディルは、揺るがない力強い瞳でフェイレイを見ていた。

「リディル……」

その信頼の眼差しに、フェイレイの胸の内で何かが弾ける。

何故我を失っているときは止められて、正気のときにリディルを斬りつける。

(そんなこと……!)

パチンと心の奥底で火が爆ぜたとき、リディルがフェイレイの呪縛を解いた。解いたというよりも、もう限界だったと言った方が正しい。

自由になったフェイレイは、剣を振り上げ、リディルに斬りかかった。