ゆっくりと北上する飛行艇に、静かに、しかし速やかに近づくものがあった。

その気配にいち早く気付いたフェイレイは、バッと席を立ち上がり、グルリと海を眺めた。

「……何か、来ましたわね」

ローズマリーも声を低くする。

「星府軍? ……いや、これは……」

ある一点に目を留めると、みるみるそれは近づいてきた。

大きく黒い帆をふくらませ、海の上を滑るようにやってくるのは、大きな帆船だ。

「あーれー……あの、旗……」

額に手を翳し、目を細める。

船の一番高いところではためいている黒い旗に描かれていたのは、大腿骨をクロスさせたものと、ドクロだった。

「……海賊かぁ」

フェイレイはどこかのんびりと、そう言った。

「まあ。海賊なんて、本当にいますのね」

ローズマリーも暢気な声。

「ちょっとフェイレイさん! あれ、海賊じゃないですか! どうしましょう!」

唯一、まともな声を上げたのがヴァンガードだ。

「……どうするかな」

フェイレイは腰に手をあて、考える。

そしてローズマリーとヴァンガードを振り返った。

「なあ、海賊ってさ、話の通じる相手だと思う?」

「……え?」

ヴァンガードが眉を顰めた。

「船に、乗っけてくれないかな」

そのフェイレイの言葉に、ヴァンガードは絶叫した。