Faylay~しあわせの魔法

「ここへは戻ってくるな。お前のIDは削除する」

「母さん」

認めてくれたのかとフェイレイが笑みを浮かべたところに、けたたましい警報が鳴り響いた。

『敵艦主砲、動き出しました。狙いはセンタービルと思われます』

辺りに若い女性オペレーターの声が響き渡る。

「……来たか」

アリアは腰に手を当てると、耳にインカムをつけ、スイッチを入れた。

「戦闘員、第二種戦闘配置」

フェイレイとヴァンガードは驚いて目を見開いた。

「母さん、まさか、戦艦と闘うの!?」

「手を出さんと言いながら撃ってくるのだ。抵抗して何が悪い。……シールド強化。主砲発射までどれくらいだ」

『およそ100秒と予測』

「まあそんなものか」

アリアはフェイレイを顎をしゃくって呼び寄せた。

「時間がない。簡潔に説明する。ひとつも残さず聞いていけよ」

「え、え? うん……」

頷きながらもフェイレイは事態をよく呑み込めていない。

「お前の通信機に戦艦の内部地図を送信しておいた。出せ」

「はあっ!?」

「早くしろ!」

怒鳴られ、フェイレイは通信機のマップボタンを押した。大抵、任務などで各地を移動するときに使うものだ。