「陛下直々にお声を掛けられるとは、光栄にございます」

『くだらぬ挨拶は良い。私のリディアーナを返してもらおう』

「……な、何と?」

アリアは思わず顔を上げる。

『そこにいるのだろう? 私の妹姫が』

カインは薄い笑みを浮かべている。アリアは動揺を見せることなく、答えた。

「皇女殿下は行方不明、もしくは亡くなられたと聞き及んでおります。私は存じ上げません」

『“エインズワース”』

その名前に、アリアはピクリと眉を動かした。

『ギルドが匿っていたのだな。“エインズワース”、我が妹姫を連れ去った罪深き元宮廷精霊士。その一族がまだ生き残っている……そうだな?』

アリアは一瞬だけ黙考した後、深く頭を下げた。

「申し訳ありません。そのような大罪人とは知らず……雇っていたのは確かでございます。すぐに、陛下の仰るとおりに処分いたします」

『結構。では、すぐに都で公開処刑とする。連れて参れ』

「承知しました」

『それから、リディアーナだ。迎えをやる、必ず差し出せ』

「……皇女殿下につきましては、解りかねます。申し訳ございませんが……」

『ならば、セルティアは国ごと吹き飛ぶが良い』

アリアは目を見開いてカインを見た。カインは変わらず、薄い微笑みを浮かべていた。