「大丈夫だと思うよ。今のおいらと、同じぐらいの力しかないと思う」
烏丸が、多子の後ろから小鬼を覗き込んで言う。
呉羽は頷いた。
「そうだな。多子様と、物の怪の烏丸が言うなら、間違いないだろう。角も、もうないし」
言って呉羽は、足元に散らばった角の残骸を、爪先でつついた。
「あ、多子様。わたくしが渡した式を、貸してください」
呉羽は多子から受け取った式神全てに息を吹きかけ、ばらばらと角の残骸の上に落とした。
「オン クロダノウ ウンジャク」
呉羽が小さく呟くと、一瞬のうちに角を覆っていた式の紙が燃え上がり、火がついたときと同様、あっという間に掻き消えた。
後には少し焦げた床板が残っただけで、角の残骸は、一欠片も残っていない。
「これでよし」
「ねぇ、お姉さん。今の、浄化の呪文だよね。浄化に今のを使ったってことは、おいらと小鬼は、浅からぬ因縁ができたってことだね」
「あ? ああ・・・・・・そうか」
烏丸の言葉に、呉羽は手の中の小鬼を見た。
今の呪(しゅ)は、不動明王に連なる一尊の呪文だ。
不動明王が背負う炎は、迦楼羅炎(かるらえん)。
迦楼羅とは浄化の炎を吐く鳥で、烏天狗は迦楼羅の流れを汲んでいる。
高丸の角を迦楼羅炎で焼き尽くしたことによって、高丸は今後、烏天狗である烏丸に、逆らうことはできなくなったというわけだ。
烏丸が、多子の後ろから小鬼を覗き込んで言う。
呉羽は頷いた。
「そうだな。多子様と、物の怪の烏丸が言うなら、間違いないだろう。角も、もうないし」
言って呉羽は、足元に散らばった角の残骸を、爪先でつついた。
「あ、多子様。わたくしが渡した式を、貸してください」
呉羽は多子から受け取った式神全てに息を吹きかけ、ばらばらと角の残骸の上に落とした。
「オン クロダノウ ウンジャク」
呉羽が小さく呟くと、一瞬のうちに角を覆っていた式の紙が燃え上がり、火がついたときと同様、あっという間に掻き消えた。
後には少し焦げた床板が残っただけで、角の残骸は、一欠片も残っていない。
「これでよし」
「ねぇ、お姉さん。今の、浄化の呪文だよね。浄化に今のを使ったってことは、おいらと小鬼は、浅からぬ因縁ができたってことだね」
「あ? ああ・・・・・・そうか」
烏丸の言葉に、呉羽は手の中の小鬼を見た。
今の呪(しゅ)は、不動明王に連なる一尊の呪文だ。
不動明王が背負う炎は、迦楼羅炎(かるらえん)。
迦楼羅とは浄化の炎を吐く鳥で、烏天狗は迦楼羅の流れを汲んでいる。
高丸の角を迦楼羅炎で焼き尽くしたことによって、高丸は今後、烏天狗である烏丸に、逆らうことはできなくなったというわけだ。


