闇に浮かぶ几帳から、白い手が伸び、呉羽を手招きした。
手が出ているわりに、几帳には、何の影も映っていない。
---この状況で、呼ばれたからってほいほい寄っていく馬鹿がおるかいっ---
そう思いながらも、呉羽は少し考えた。
ちらりと背後に目をやると、すでにそこには烏丸の姿も多子の姿もない。
正確にはいるのだろうが、見事なまでに綺麗に隠れている。
---多子様の鞠もあることだし、気配も消せるだろう---
しかしここから離れていいものか。
まだ几帳の向こうの物の怪が、どの程度のものか、わからないのだ。
とりあえず呉羽は、少しだけ場所を移動した。
「用事があるなら、お前がこっちへ来い」
傲然と言い放ち、かちんと音を立てて、呉羽はそはや丸の鯉口を切った。
途端にそはや丸から、妖気が凄まじい勢いで溢れ、呉羽を取り巻く。
几帳の裏から伸びた手は、警戒したように、ぴたりと動きを止めた。
手が出ているわりに、几帳には、何の影も映っていない。
---この状況で、呼ばれたからってほいほい寄っていく馬鹿がおるかいっ---
そう思いながらも、呉羽は少し考えた。
ちらりと背後に目をやると、すでにそこには烏丸の姿も多子の姿もない。
正確にはいるのだろうが、見事なまでに綺麗に隠れている。
---多子様の鞠もあることだし、気配も消せるだろう---
しかしここから離れていいものか。
まだ几帳の向こうの物の怪が、どの程度のものか、わからないのだ。
とりあえず呉羽は、少しだけ場所を移動した。
「用事があるなら、お前がこっちへ来い」
傲然と言い放ち、かちんと音を立てて、呉羽はそはや丸の鯉口を切った。
途端にそはや丸から、妖気が凄まじい勢いで溢れ、呉羽を取り巻く。
几帳の裏から伸びた手は、警戒したように、ぴたりと動きを止めた。


