その途端、勢い良く妻戸が開き、呉羽と多子が、部屋の中へ引き込まれる。
中の物の怪は、呉羽と多子だけを狙ったようだが、生憎呉羽の袖を掴んでいた烏丸も、異変を察し、素早く掴んだ呉羽の手の中で刀に戻ったそはや丸も、一緒に部屋の中に吸い込まれた。
妻戸は開いたときと同様、皆を呑み込むと、勢い良く閉まった。
辺りは闇に包まれる。
呉羽は右手で多子を抱き寄せ、左手でそはや丸を握ったまま、じっと闇を睨んだ。
「・・・・・・烏丸。何か見えるか?」
呉羽も‘見る’力はあるが、物理的に辺りが見えないと、見えるものも見えない。
低く押し殺した声で、背中にへばりつく烏丸に問う。
「奥の几帳(きちょう)の向こうに、何か、いるよ・・・・・・」
『全く、女だけを引き込もうたぁ、いやらしい奴だねぇ』
そはや丸の声に、遠くに小さな灯がともった。
闇の中に、几帳が浮かび上がる。
中の物の怪は、呉羽と多子だけを狙ったようだが、生憎呉羽の袖を掴んでいた烏丸も、異変を察し、素早く掴んだ呉羽の手の中で刀に戻ったそはや丸も、一緒に部屋の中に吸い込まれた。
妻戸は開いたときと同様、皆を呑み込むと、勢い良く閉まった。
辺りは闇に包まれる。
呉羽は右手で多子を抱き寄せ、左手でそはや丸を握ったまま、じっと闇を睨んだ。
「・・・・・・烏丸。何か見えるか?」
呉羽も‘見る’力はあるが、物理的に辺りが見えないと、見えるものも見えない。
低く押し殺した声で、背中にへばりつく烏丸に問う。
「奥の几帳(きちょう)の向こうに、何か、いるよ・・・・・・」
『全く、女だけを引き込もうたぁ、いやらしい奴だねぇ』
そはや丸の声に、遠くに小さな灯がともった。
闇の中に、几帳が浮かび上がる。


