雑草を踏みしめて門をくぐると、だだっ広い庭に出た。
船をも浮かべられたであろう大きな池は、今や水もなく干涸らびている。
「外から見たより、随分と荒れてるじゃねぇか」
手を頭の後ろで組んだまま、辺りを眺め回すそはや丸が、緊張感なく言った。
多子は初めのように黙り込んで、そはや丸の帯を強く握っている。
そんな多子に、そはや丸は視線を落として、にやりと笑った。
「手ぇ引いてやってもいいがな。下手すると、俺の妖気に、姫さんが引き込まれるかもしれないぜ」
途端に多子は、そはや丸の帯から、ぱっと手を放した。
「お前という奴は・・・・・・。攻撃対象は、誰でもいいのか」
呆れながら呉羽は、多子を引き寄せた。
多子は大人しく、呉羽の袖を握る。
そはや丸は、相変わらず悪びれることもなく、屋敷の簀の子(すのこ)に上がり込んで、中を窺っている。
船をも浮かべられたであろう大きな池は、今や水もなく干涸らびている。
「外から見たより、随分と荒れてるじゃねぇか」
手を頭の後ろで組んだまま、辺りを眺め回すそはや丸が、緊張感なく言った。
多子は初めのように黙り込んで、そはや丸の帯を強く握っている。
そんな多子に、そはや丸は視線を落として、にやりと笑った。
「手ぇ引いてやってもいいがな。下手すると、俺の妖気に、姫さんが引き込まれるかもしれないぜ」
途端に多子は、そはや丸の帯から、ぱっと手を放した。
「お前という奴は・・・・・・。攻撃対象は、誰でもいいのか」
呆れながら呉羽は、多子を引き寄せた。
多子は大人しく、呉羽の袖を握る。
そはや丸は、相変わらず悪びれることもなく、屋敷の簀の子(すのこ)に上がり込んで、中を窺っている。


