「あ、あの、巫女様。私は・・・・・・」

右丸の声に、呉羽は振り返り、考え込んだ。

こういう場に、素人(しろうと)は足手まといなだけだ。
が、多子が気を失ったりした場合、運んだりする人手は必要だ。

どうしたもんかと思案する呉羽に、多子が思い出したように言った。

「そうだ、お姉様。右丸にもあの式神、あげて頂戴よ」

とりあえず呉羽は、回れ右をし、右丸に近づくと、多子と同じように式神の紙を数枚渡した。

「これは何かあったときに飛ばす式だ。‘急急如律令’と言って、飛ばせばいい。姫にも渡してあるが・・・・・・。お前、ここで待つか? それとも、一緒に来るか?」

「え・・・・・・。あ・・・・・・、あの・・・・・・」

呉羽に見つめられ、右丸は真っ赤になりながら口ごもった。
しかも、式神を乗せるためだが、呉羽に手を取られている。

が、そんな右丸の小さな幸せは、呉羽の後ろから不意に伸びてきた腕によって霧散する。

「呉羽には俺がいるが、お姫さんは、身を守る術(すべ)がないってことだよ。ま、ずぶの素人のお前を連れて行ったって、足手まといなんだがな」

そはや丸が、呉羽を後ろから抱きしめるようにして言ったのだ。