『おいおい。一体どこまで行くんだよ』

呉羽の腰に収まったまま、そはや丸は不満げに声を上げた。
声を上げたといっても、今は刀の状態なので、そはや丸の声は呉羽の頭の中に直接響いていて、他の者には聞こえない。

蓮台野の住処から、すでに四半刻ほど歩いている。
日はすでに西に傾いている。

『迎えの者は、一体どこだよ? 蓮台野に入りたくないってのだけでも腰抜けなのに、通りに出たって姿がないじゃねぇか』

「・・・・・・」

『まったく、仮にも女子(おなご)を一人歩きさせるなんざ、男の風上にも置けねぇってなもんだ、なぁ』

「・・・・・・」

『おいこら、無視すんじゃねー』

「何か、あったのやもしれぬな」

歩を緩めることなく、呉羽はぼそりと言った。