妖(あやかし)狩り~外法師・呉羽&妖刀・そはや丸~

「でも多子様は、その鞠を肌身離さず持ってらっしゃる。やはり、実の父親から頂いたものだからですか?」

呉羽の問いに、多子は鞠をぽんと軽く叩いた。

「そういうわけじゃないけど。だって別に、徳大寺様のことなんて、覚えてないし。ただこの鞠は、魔除けのお守りだって、ずっと言われてたから」

「魔除けというか。まぁ姫にとっては、魔除けみたいなもんですけど。実際は、姫の負担を和らげる効果があるようですね」

「癒しってこと?」

拍子抜けしたように、多子が言う。

「いえ、気を絶つ力が籠められています。僅かですがね。香が仕込んであるでしょう」

へぇ、と多子は鞠に鼻をつけて、くんくんと匂った。

「そういえば、別に香袋を換えたこともないのに、いつまでも香りが消えないから、不思議だなぁとは思ってたのよ」