妖(あやかし)狩り~外法師・呉羽&妖刀・そはや丸~

「そういえば、その鳥の物の怪、葵祭の折りに、牛車に飛び込んできた奴ですか?」

十中八九、右丸の中にいる烏丸が飛び込んだ貴族の牛車というのは、この多子の車だろうが、とりあえず確かめるため、呉羽は多子に聞いた。

「そうよ。びっくりしたけど、何かぼろぼろで、今にも死にそうだったから。まだ小さかったし。大きかったら、怖かったと思うけどね」

やっぱりね、と思いつつ、呉羽は多子の膝の上にある鞠を見つめた。
五色の糸を使った、美麗な創りだ。

「その鞠、いつも持ってらっしゃいますね」

やはり、そう強い力はないのだろう。
呉羽には、ただの鞠以外の何物でもない。

「これは、私が今の父上のところに来るときに、徳大寺家から頂いたのだそうよ」

「?」

「私の父上は、徳大寺公能様。頼長様は、養父なのよ」

「ふぅん」

よくわからない。
食い詰めた農民が、子を養子に出すことは珍しくないだろうが、貴族の間でもあることなのか。
もちろん、理由は全く違うのだろうが。

「己の出世のためさ。どこの子供を手元に置いたほうが、将来有利か。どこに子供をやったほうが、己の地位が上がるか。そういう理由で、子供を養子に出すのが貴族だ」

「そういうもんか」

「そういうもんよ」

そはや丸の解説に、多子もあっさりと同意する。