「それで結局、何の用事で来られたのでしたっけ?」
呉羽の出したお茶に顔をしかめながら、多子は、ああそうそう、と口を開いた。
「例のお屋敷に、行こうと思って」
その言葉に、呉羽は訝しげな目を向ける。
「大事な姫君が化け物屋敷に行くのに、左大臣様は、護衛もつけないのですか?」
本当は護衛の侍(さぶらい)などがわらわらついて来られたら、鬱陶しいだけなのだが、いざ行くとなれば、きっとそうなるだろうと、うんざりしていた呉羽は、右丸一人の供で来た多子に、初めて違和感を覚えた。
「ああ、あまり物々しくしたら、お姉様の負担が大きいと思って。実は、抜け出してきたのよ」
「どうりで・・・・・・」
化け物屋敷に行くのでなくても、貴族の姫君の外出のお供が牛飼童だけというのは、あり得ない。
尤もお忍びとしても、少なすぎる供なのだが。
「無用心ですねぇ。乳兄弟とか、それなりに信頼できる者の一人や二人、いるものなのではないですか?」
生まれたときから物の怪と共に育った呉羽には、物の怪から聞いた情報や、物語で得た知識しかないので、一般家庭がどういうものかはわからないが、大抵の物語には、貴族の姫君には、そういった女房が、いつもついていたように思う。
呉羽の出したお茶に顔をしかめながら、多子は、ああそうそう、と口を開いた。
「例のお屋敷に、行こうと思って」
その言葉に、呉羽は訝しげな目を向ける。
「大事な姫君が化け物屋敷に行くのに、左大臣様は、護衛もつけないのですか?」
本当は護衛の侍(さぶらい)などがわらわらついて来られたら、鬱陶しいだけなのだが、いざ行くとなれば、きっとそうなるだろうと、うんざりしていた呉羽は、右丸一人の供で来た多子に、初めて違和感を覚えた。
「ああ、あまり物々しくしたら、お姉様の負担が大きいと思って。実は、抜け出してきたのよ」
「どうりで・・・・・・」
化け物屋敷に行くのでなくても、貴族の姫君の外出のお供が牛飼童だけというのは、あり得ない。
尤もお忍びとしても、少なすぎる供なのだが。
「無用心ですねぇ。乳兄弟とか、それなりに信頼できる者の一人や二人、いるものなのではないですか?」
生まれたときから物の怪と共に育った呉羽には、物の怪から聞いた情報や、物語で得た知識しかないので、一般家庭がどういうものかはわからないが、大抵の物語には、貴族の姫君には、そういった女房が、いつもついていたように思う。


