「お姉様。会いたかったわ」
多子が、呉羽の傍に駆け寄り、ぺたりと座り込んで嬉しそうに言った。
「・・・・・・そいつはどうも」
低い声で言いながら、髪を掻き上げる呉羽に、男が髪を縛る組紐を投げて寄越す。
「あ、と」
多子は、慌てて腰に挟んでいた衵扇(あこめおうぎ)を顔の前で広げて、男から己の顔を隠した。
この時代の、上流貴族の礼儀だ。
「お、お姉様。この殿方は?」
衵扇ごと、顔を呉羽に寄せて、多子は興味津々といった風に目を輝かせる。
「お姉様の、良いかたなのかしら?」
そはや丸は、今は人型だが、妖気は刀のときと変わらない。
今も凄まじい妖気を放っているだろうに、ただでさえ瘴気(しょうき)が渦巻くこの地で感覚が麻痺してしまったのか、多子は男---そはや丸の妖気を気にする風もなく、好奇の目を向けている。
ただ単に、乙女特有の好奇心が、恐怖よりも勝っただけかもしれないが。
多子が、呉羽の傍に駆け寄り、ぺたりと座り込んで嬉しそうに言った。
「・・・・・・そいつはどうも」
低い声で言いながら、髪を掻き上げる呉羽に、男が髪を縛る組紐を投げて寄越す。
「あ、と」
多子は、慌てて腰に挟んでいた衵扇(あこめおうぎ)を顔の前で広げて、男から己の顔を隠した。
この時代の、上流貴族の礼儀だ。
「お、お姉様。この殿方は?」
衵扇ごと、顔を呉羽に寄せて、多子は興味津々といった風に目を輝かせる。
「お姉様の、良いかたなのかしら?」
そはや丸は、今は人型だが、妖気は刀のときと変わらない。
今も凄まじい妖気を放っているだろうに、ただでさえ瘴気(しょうき)が渦巻くこの地で感覚が麻痺してしまったのか、多子は男---そはや丸の妖気を気にする風もなく、好奇の目を向けている。
ただ単に、乙女特有の好奇心が、恐怖よりも勝っただけかもしれないが。


