「だってあの陰陽師、力もないおいらに向かって、容赦なく術を放つんだよ? あそこで姫さんに叩き出されていたら、おいら間違いなく死んでたよ」
「ま、物の怪の宿命だな。不用意に人前に出ようとすると、そういう目に遭う」
しれっと言う呉羽に、烏丸は非難がましい目を向ける。
「しかし、その姫さんのところに逃げ込んだだけで、よく助かったな。陰陽師なら、どこに逃げようと、バレそうなもんだが」
呉羽は烏丸の視線を受け流し、首を捻った。
何らかの力を持つ姫なのだろうか。
呉羽の脳裏に、多子が浮かんだ。
「変な感じは受けなかったよ。あ、でもきっと、姫さんの持ってた鞠に仕込まれた、香のおかげだと思う」
「鞠?」
多子も、ずっと鞠を持っていた。
多子もまだ幼いし、単なる玩具と思っていたが、なるほど、魔除けか何かを施された、お守りなのだろう。
「そりゃ、左大臣の姫だな?」
おそらく多子の鞠には、微弱ながら‘気’を絶つ呪術が施されているのだ。
強力な術者の呉羽やそはや丸には効かないが、瀕死の烏丸の気を絶つことぐらいはできたのだろう。
「ま、物の怪の宿命だな。不用意に人前に出ようとすると、そういう目に遭う」
しれっと言う呉羽に、烏丸は非難がましい目を向ける。
「しかし、その姫さんのところに逃げ込んだだけで、よく助かったな。陰陽師なら、どこに逃げようと、バレそうなもんだが」
呉羽は烏丸の視線を受け流し、首を捻った。
何らかの力を持つ姫なのだろうか。
呉羽の脳裏に、多子が浮かんだ。
「変な感じは受けなかったよ。あ、でもきっと、姫さんの持ってた鞠に仕込まれた、香のおかげだと思う」
「鞠?」
多子も、ずっと鞠を持っていた。
多子もまだ幼いし、単なる玩具と思っていたが、なるほど、魔除けか何かを施された、お守りなのだろう。
「そりゃ、左大臣の姫だな?」
おそらく多子の鞠には、微弱ながら‘気’を絶つ呪術が施されているのだ。
強力な術者の呉羽やそはや丸には効かないが、瀕死の烏丸の気を絶つことぐらいはできたのだろう。


