妖(あやかし)狩り~外法師・呉羽&妖刀・そはや丸~

呉羽は眉間に皺を寄せて、童を見た。
今日はよく眉間に皺が入る。

『名を与えられたら、お前は呉羽に、その名で縛られるぜ』

物の怪を調伏するのに、名を与えるという方法がある。
ただ消滅させるのではなく、物の怪と主従関係を結ぶのだ。

主人から与えられた名が、契約書になる。

「いいよ。お姉さんは、強いもの。綺麗だし」

にこにこと無邪気に笑う童に、呉羽は項垂れた。

何故こうも、自分は子供に好かれるのだ。
右丸はともかく、今実際話している烏天狗は、おそらく十にもなっていない。

ま、子供といっても物の怪だしな、と思い、呉羽は童を見て短く言った。

「じゃ、烏丸(からすまる)」

『お前、考える気ねーだろ』

そはや丸の呆れ声を聞き流し、呉羽は童に重ねて言った。

「いいか?」

そのまんまの名前にも、童は満面の笑みを浮かべ、大きく頷いた。

「うん。じゃあおいらは、今から烏丸ね」

「それで、えーと、何故何の力もない右丸が、烏丸など救ってくれたのだ」

「えっとね」

烏丸はうきうきとした様子で、足取りも軽やかに進みながら語り出した。