『何だ、こいつ。けど物の怪っぽいし、斬っちまうか?』
呆れたように言うそはや丸に、童はさらに激しく泣きながら叫んだ。
「やだ! おいら、何もしてないじゃない。見逃してくれよぅ」
呉羽は車から身を乗り出し、童の胸倉を掴むと、乱暴に自分のほうへ引き寄せた。
「貴様、そはや丸の声が聞こえるのか。やはり、ただ者じゃないな。何者だ、答えろ。次はないぞ」
射抜くような濃紺の瞳に、童は震え上がった。
が、ほのかに頬が紅くもなっている。
「わ、わかったよぅ。言うから、放して・・・・・・。車も動かさないと、お姉さんも帰れないでしょ・・・・・・」
気づけば牛車は、完全に止まってしまっている。
散々騒いでしまったし、悪くすれば検非違使(けびいし)が駆けつける騒ぎになるかもしれない。
呉羽は突き飛ばすように童を放すと、車の前板に足をかけた状態で、どかりと座った。
「そはや丸の声が聞こえるなら、こいつの怖さもわかるだろう。変な真似したら、容赦せんぞ」
相変わらず、そはや丸は抜いたまま、呉羽は童に言った。
童は涙を袖で拭いつつ頷き、牛を操り再び歩かせた。
また車がゆるゆる動きだし、童は己のことを話し出した。
呆れたように言うそはや丸に、童はさらに激しく泣きながら叫んだ。
「やだ! おいら、何もしてないじゃない。見逃してくれよぅ」
呉羽は車から身を乗り出し、童の胸倉を掴むと、乱暴に自分のほうへ引き寄せた。
「貴様、そはや丸の声が聞こえるのか。やはり、ただ者じゃないな。何者だ、答えろ。次はないぞ」
射抜くような濃紺の瞳に、童は震え上がった。
が、ほのかに頬が紅くもなっている。
「わ、わかったよぅ。言うから、放して・・・・・・。車も動かさないと、お姉さんも帰れないでしょ・・・・・・」
気づけば牛車は、完全に止まってしまっている。
散々騒いでしまったし、悪くすれば検非違使(けびいし)が駆けつける騒ぎになるかもしれない。
呉羽は突き飛ばすように童を放すと、車の前板に足をかけた状態で、どかりと座った。
「そはや丸の声が聞こえるなら、こいつの怖さもわかるだろう。変な真似したら、容赦せんぞ」
相変わらず、そはや丸は抜いたまま、呉羽は童に言った。
童は涙を袖で拭いつつ頷き、牛を操り再び歩かせた。
また車がゆるゆる動きだし、童は己のことを話し出した。


