妖(あやかし)狩り~外法師・呉羽&妖刀・そはや丸~

「多子姫様。お遊びにしても、そのような者と馴れ合うのはおよしなされ。外法師など、読んで字の如く、世間から忌み嫌われている外法を生業とする者です。汚らわしき存在なのですよ」

一方的に言い、女房は呉羽に鋭い目を向けた。

「お前。卑しい外法師のくせに、恐れ多くも多子姫様に近づこうなど、どういうつもりじゃ。お前のような者がいるだけで、この場が穢れる。とっとと立ち去れぃ」

『何だぁ? このババァ! 斬られてぇのか!』

そはや丸が、気色ばむ。
そはや丸の妖気が昂ぶったのがわかったのか、多子がびくっと手を引っ込めた。

「呼ばれてわざわざ出向いてきたのはこちらなのに、そのように言われるのは心外ですな。ま、あなたの言うことも、わからんでもない。では、頼長様に断って、わたくしは退散することに致しましょう」

女房の一方的な物言いは腹が立ったが、これ幸いと、呉羽は再び踵を返そうとした。
が、やはり多子に行く手を阻まれてしまう。

多子は必死で呉羽の前に回り込んで、小さな腕をいっぱいに広げて、通せんぼしている。

「多子様。お聞きになりましたでしょう。あれが世間の意見ですよ」

微妙に棘を含んだ言い方で、呉羽は多子を見た。
呉羽にしては珍しく、多子が少し可哀相に思えた。
目にいっぱい涙を溜めて、呉羽を見上げている。