妖(あやかし)狩り~外法師・呉羽&妖刀・そはや丸~

「わたくしは大丈夫です。この刀の、主ですから」

涼しい顔で言ってのける呉羽に、そはや丸がむっつりと黙り込んだ。

「それ、どういう刀なの?」

なおも呉羽の袖を掴んだまま、相変わらず怖々そはや丸を見て言う多子に、呉羽はさらりと言う。

「弱い持ち主は、この刀に喰われます。ですが、強ければあらゆる妖(あやかし)に打ち勝てる、最強の妖刀ですよ」

前半の説明に、顔を引き攣らせた多子だが、呉羽がその最強の妖刀を操れるほど強いということに、目を輝かせた。

「つまり、あなたは最強の妖刀の主なわけね?」

頷くなり、多子は呉羽に飛びついた。

「かっこいい!」

「はぁ? ちょっと、お姫様・・・・・・」

苦手な子供に抱きつかれて、呉羽は思わず、そはや丸を握る手に力が入る。
そんな呉羽に気づかないまま、多子は無邪気に呉羽の顔を覗き込んだ。

「さすが、父上の見込んだ外法師だけあるわ。私も、気に入ってよ」

「・・・・・・そいつはどうも」

にこにこと嬉しそうな多子とは対照的に、呉羽はこの上なく無愛想に言って多子を引きはがすと、踵を返した。

「ちょっと、どこ行くの?」

慌てて追い縋る多子を振り返りもせず、呉羽は素っ気なく答えた。

「帰るのです。これ以上暗くなると、家に帰るだけで物の怪と一戦交えなければなりませぬので」

だてに蓮台野に居を構えているわけではない。
物の怪との喧嘩など屁でもないが、慣れない大貴族の相手で、今日はとにかく疲れている。
これ以上無駄な体力は、使いたくないのだ。