妖(あやかし)狩り~外法師・呉羽&妖刀・そはや丸~

そう思って冷めた目を向けていた呉羽に、多子は驚くべきことを言った。

「あなたからは、強い気をばしばし感じるわ。その辺の人と違うのは、すぐにわかった。私は‘見る’ことはできないけど、‘感じる’ことができるのよ」

呉羽は、目の前ではきはきと喋る多子を、まじまじと見つめた。
十歳ぐらいだろうに、呉羽を見つめる目力は、相当なものだ。

「・・・・・・気が読めるなら、なおさら化け物屋敷などに入り込めば、恐ろしい目に遭うのではないですか?」

呉羽の言葉に、きゅっと唇を噛み、多子は手にしていた鞠に視線を落とした。

「そうかもしれない。でも今まで、気配は感じても見えないから、自分では何の対処もできないままだった。それだと、これからは困るのよ」

「何故」

珍しく多子に興味を覚え、呉羽は少女に向き直った。

「私は入内(じゅだい)を控えているのよ。後宮は、魔物の巣窟よ! 気を読むばかりで対応できなきゃ、とてもやっていけないわ!」

「はぁ・・・・・・」

呉羽は胡乱な目で多子を見た。

貴族というのは、こんな幼いうちから、そんなことを気にして生きていかねばならないのか。
呉羽でさえ、よくは知らない‘後宮’という言葉を当たり前のように使う少女に、いやが上にも己との境遇の違いを見せつけられる。
尤も呉羽にとっては、羨ましくも何ともないが。