妖(あやかし)狩り~外法師・呉羽&妖刀・そはや丸~

「気づかなかったか? 呉羽の袴だよ。あ、お前は何が起こったか、知らないんだったな」

「え・・・・・・。く、呉羽殿の・・・・・・?」

右丸はぽかんと口を開けたまま、しばらく黙っていたが、やがておろおろと狼狽えだした。

「あ、あの。どういうことですか? な、何故、袴など・・・・・・」

言いながら、右丸の顔が赤く染まる。
それを見逃さず、そはや丸は、密かにほくそ笑んだ。

「そ、そういえば、あなたも単だけですね。一体、何が・・・・・・?」

ここでそはや丸は、思わせぶりに、ふぅ、とため息をつき、努めて静かに言った。

「俺は男だから、別に衣を裂かれてもいいけど、呉羽は一応、女だからな」

「こ、衣を・・・・・・」

右丸の視線が、袴に散った血を捕らえた。
それに、右丸は息を呑む。

「ま、まさか・・・・・・。呉羽殿は、屋敷の中で・・・・・・ぼ、暴行を・・・・・・?」

おそらく右丸は、男に取り押さえられ震える呉羽、ぐらいのものを思い描いているのだろう。

「あ~、まぁ、大丈夫だぜ。俺がついてっし」

後半をさりげなく強調するそはや丸に、右丸の顔が氷結する。

そはや丸は、吹き出したいのを必死で堪え、目を逸らした。
固まった表情の右丸を見ていると、我慢できず吹き出してしまいそうだった。