一方牛車の外では、行きと同様、右丸が牛を操り、そはや丸が右丸の少し後ろを歩いている。
長く無言で歩を進めていた二人だが、右丸が意を決したように口を開いた。
「あの。その手に持っているのは・・・・・・」
「あん? これか?」
ぶらぶらという擬音語がぴったりな、やる気なさそうに歩いていたそはや丸が、無造作に片手に掴んでいた朱い衣を翳して言った。
朱い衣---呉羽が脱いだ、袴だ。
袴にも高丸の血がついているため、車の屋形内に持ち込むと、うっかり中を汚してしまうかもしれない。
何となく左大臣家の牛車を汚すのは気が引けて、そはや丸が持って歩いていたのだ。
尤も、この男が快く荷物持ちを引き受けてくれるはずもなく、文句を垂れるのを、無理矢理呉羽が持たせたのだが。
が、これを持っていたおかげで、またそはや丸好みの暇潰しができそうな空気に、彼は意地悪く口角をつり上げた。
長く無言で歩を進めていた二人だが、右丸が意を決したように口を開いた。
「あの。その手に持っているのは・・・・・・」
「あん? これか?」
ぶらぶらという擬音語がぴったりな、やる気なさそうに歩いていたそはや丸が、無造作に片手に掴んでいた朱い衣を翳して言った。
朱い衣---呉羽が脱いだ、袴だ。
袴にも高丸の血がついているため、車の屋形内に持ち込むと、うっかり中を汚してしまうかもしれない。
何となく左大臣家の牛車を汚すのは気が引けて、そはや丸が持って歩いていたのだ。
尤も、この男が快く荷物持ちを引き受けてくれるはずもなく、文句を垂れるのを、無理矢理呉羽が持たせたのだが。
が、これを持っていたおかげで、またそはや丸好みの暇潰しができそうな空気に、彼は意地悪く口角をつり上げた。


