「何でわたくしが、男なんぞに面倒を見てもらわにゃならんのですか。そんな退屈な生活、御免被ります」
あら、と多子は、現実に引き戻されたように、乗り出していた身体を戻した。
「勿体ないわねぇ~。お姉様は、ご自分のことを、わかってらっしゃらないわ。父上に、後見を頼んでみればいいのよ。あっという間に、引く手数多よ。私から頼んでみましょうか?」
「結構です。わたくしは、自分のことは、よくわかっておりますよ。貴族の生活など、到底満足できないだろうとね」
外見のことよ、と、ぼそりと呟き、多子はため息をついた。
「ああ、やっぱりそはや丸の言ったとおりだわ。そはや丸も、お姉様は貴族なんかに興味はないって。さすがよね。心が通じ合ってる証拠だわ」
諦めたように言いつつも、何気にそはや丸との関係を口にする多子の目は、再び好奇心に輝いている。
「それだけ心が通じ合ってる殿方がいたら、その辺の男なんて、目に入らないのも無理はないわね」
「殿方も何も、奴は刀が本性ですって。性格も、悪いですよ」
相変わらずしれっと言う呉羽に、多子は広げた扇の向こうから不気味に笑う。
旋風丸は、呉羽の鈍感さに根を上げたように、大きく息をついた。
「やれやれ。お前さんは、人より物の怪に近いのぅ」
あら、と多子は、現実に引き戻されたように、乗り出していた身体を戻した。
「勿体ないわねぇ~。お姉様は、ご自分のことを、わかってらっしゃらないわ。父上に、後見を頼んでみればいいのよ。あっという間に、引く手数多よ。私から頼んでみましょうか?」
「結構です。わたくしは、自分のことは、よくわかっておりますよ。貴族の生活など、到底満足できないだろうとね」
外見のことよ、と、ぼそりと呟き、多子はため息をついた。
「ああ、やっぱりそはや丸の言ったとおりだわ。そはや丸も、お姉様は貴族なんかに興味はないって。さすがよね。心が通じ合ってる証拠だわ」
諦めたように言いつつも、何気にそはや丸との関係を口にする多子の目は、再び好奇心に輝いている。
「それだけ心が通じ合ってる殿方がいたら、その辺の男なんて、目に入らないのも無理はないわね」
「殿方も何も、奴は刀が本性ですって。性格も、悪いですよ」
相変わらずしれっと言う呉羽に、多子は広げた扇の向こうから不気味に笑う。
旋風丸は、呉羽の鈍感さに根を上げたように、大きく息をついた。
「やれやれ。お前さんは、人より物の怪に近いのぅ」


