妖(あやかし)狩り~外法師・呉羽&妖刀・そはや丸~

綺麗な物をまとい、男の目を気にして生活することの、どこが楽しいというのか。
男嫌いの呉羽には、考えられない生活だ。

「い、色恋が楽しい・・・・・・。男と遊ぶのが、楽しいのか?」

いかにも嫌そうに、眉間に深く皺を刻んで呉羽が言う。
顔色まで蒼くなっている。

「そうよ。光源氏のような殿方と、燃え上がるような恋文のやり取りをして・・・・・・。ああっ! 憧れるわ!! 私が後宮に入っても、光の君は、危険を顧みず忍んで来られるのよ!」

胸の前で両手を組み、多子は顔を赤らめて叫んだ。
その勢いのまま、ずいっと呉羽に顔を近づける。

「お姉様だって、貴族お抱えになって、綺麗な着物をまとって静かに座ってれば、その辺の殿方は放っておかないわよ」

「やめてください、冗談じゃない。静かに座ってて、どう仕事をこなすんです」

嫌悪感をむき出しにして言う呉羽の顔の前で、扇をぶんぶんと振り、多子は興奮冷めやらぬというように言う。

「もおぉ~~っ。何言ってるのよぅ。お姉様なら、お仕事なんてしなくたって、殿方が面倒見てくれるわよぅ。お姉様はただ、着飾って、訪れる殿方を、にっこりお迎えするだけでいいのよ」

何かの物語と重ね合わせているように、熱っぽく語る多子とは反対に、呉羽は冷水を浴びせられたように、芯からぞっとした。