妖(あやかし)狩り~外法師・呉羽&妖刀・そはや丸~

呉羽を牛車に詰め込み、自分も乗り込みながら、多子はやっと、右丸を解放することを許した。

「何故多子様が、わたくしを右丸から隠したがるのか、わかりませぬな」

車の中で片膝を立てた呉羽に、多子は、ふぅ、とため息をついてみせる。

「全く、お姉様は人外のものには鋭いのに、何故人に関しては、こう鈍感なのかしら」

「人? 右丸ですか? 彼が何か?」

首を傾げる呉羽を、多子は手に持った扇を弄びながら、じっと見つめた。

「・・・・・・ま、いいわ。そうでないと、面白くないし。ねぇ、お姉様は、そはや丸のこと、どう思ってるの?」

多子の問いに、呉羽はますます首を傾げる。

「ただの妖刀ですよ」

「でも彼がいないと、お姉様は、独りぼっちなんじゃなくて?」

「そういえば、そうですね」

「大事なんじゃない?」

「まぁ、そうですね。奴がいないと、おまんまの食い上げですから」

多子が、やれやれというように首を振った。

「お前さん、歳はお姫さんよりいっておるが、心のほうは、驚くほど未熟じゃな」

旋風丸も、呆れたように言う。

「心が未熟?」

いささかむっとし、呉羽は旋風丸を睨んだ。
良家のお姫様よりも心が未熟というのは、どうにも解せない。

「心というか、乙女心じゃよ。お前さんには、年相応な女子(おなご)の心というものが、感じられぬ」

呉羽の心中を察したように、旋風丸が説明する。
呉羽は少し考えるように、多子を見た。