「……。」 「……。」 無言が、走る。 私の目に映るのは、チラチラと私を見たり見なかったりする、翔の視線。 翔は困ったように、だけども真っ直ぐ。 何も考えてなさそうな目で、私を見てくる。 そんな翔の瞳は無垢で、汚れを知らなそうで。 億劫になった私は、その視線に気づかないふりして、ツンと空気を睨んでいた。 「……早口。」 「……。」 「…早口、あのさ。」 空気が、震える。 さっきまで不安定だった翔の目線が、しっかりと定まったのを感じた。 「…ねぇ、早口。 ―…なんで、泣いていたの?」