「…いいもの、持ってきてたんだ。」 私は、思わず固まってしまった。 怪しげに彼女がポケットから取り出したもの。 ――それは、 あの時と同じ、『ハサミ』だったから…。 突然、さっきまで何にも動じなかった心が、一気に脈立つ。 足がブルブルと震えている感覚がした。 ドクンドクンと心臓が波立っているのがわかる。 …どうしよう。 恐い。 …ハサミに、屋上。 あの時と、同じだ。