杏を部屋に連れてきて、10数分後。


彼女に『ケーキ、作ってきたけど食べる?』と、筆談で聞かれた。


冷たかった体も暖房で温まり、動く気になったらしい。



「あぁ、食べたい」


そう返すと、『コーヒーも入れて来るね』と書き足して、部屋を出て行く。


しかし、杏は……ニット帽は部屋に来て取ったものの……真っ白いコートは脱がない。



やっぱ寒いとか? カゼ引いてんじゃねーよな?


ソファーに座って、アイツが戻ってくるのを待った。




数分後。トレーにふたつのマグカップをのせて帰ってくる。


ケーキの入った箱も一緒だ。


その箱から、ケーキを取り出したんだが……これまた、上手いもんだよ。



CDと同じくらいのサイズだが、見た目は……マジ店で売っているのと変わらない。

生クリームと苺を使ってある。


ケーキの真ん中には、チョコのプレートがあり、【MaryXmas!】と書かれていた。



「ホント、お前なんでもできるよな?」



そう言うと、『ん?』としたキョトン顔で、見つめ返される。



杏は、ケーキにろうそくを立てていた。



何を言われたのか、まるでわかってない。



つーか、な。



「コート脱がねえの?」



気になっていたことを指摘した。