「は…?」
“待って”なんて言われたら、無視して走って行くわけにもいかず、俺は足を止めるしかない。
振り返ると、背の小さな女の子。
自分自身、身長157㎝と、男子にしては小柄。
だけど、バレー部に所属していて、周りの女子の背が少し高めばかりったせいか、彼女はすごく小さく感じた。
「えと…あの…あー…」
女の子は俯いたまま、何か困っている様子。
何が言いたいんだ…?
告白?…って、こんな子知らないし。
だいたい今、告白する奴なんていないだろ…
入学式に遅刻するっていうのに…。
…遅刻?…遅刻!
「分かった!」
まるでクイズ番組みたいに、つい声を上げてしまった。
だけど、その勢いのまま言葉を続ける。
「アンタどこ行けばいいか、分からないんだろっ?」
このままだと遅刻すると思った俺は、返事も聞かずに、彼女の手を取って走り出した。
黙って引っ張られるまま、一生懸命走る姿に、
やっぱり、どこへ行けばいいか、分からなくなってたんだ。
間違いないと確信する。



