右手からぬっと影が伸びた。

高さは障子の四分の一もあり、
その姿はおよそ人とは思えなかった。

お婆さんは息をのむ。
まだ夢でも見ているのだろうか。


影はわずかに揺れながら歩みでる。
細い躯、細い脚、太い腹。

『虫?』
お婆さんがそう気付いたその時、

今度は左手から、細い脚に吊られるような丸い生き物が現れた。
こちらも同様に大きいが、
『クモ?』

すると右手の影の前部がスッと上に上がり、その特徴的な前肢が露わになった。
『カマキリ!』

お婆さんには合点がいった。
サイズは犬ぐらいあるが、まごうことなく虫だ。
いや、正確には灯りで映し出された小さな虫の大きな影絵だ。