真正面から揺らぐように、視界のうちに唐突ともとれる勢いで奴は現れた。

四対八肢に八眼を持つ異様。
しかも素早く、
そして巨体。

昆虫の敵、蜘蛛類の中でも本州最大。ゆえに最速。
足高蜘蛛(アシダカグモ)と言う南方渡来の大蜘蛛だ。

サイズは中型で、相対すれば体躯は五分五分という所。
奴は視界に入った己より小さい者は全て襲うという。

体高は勝る。
しかし奴はどう見る?

鎌を大きく振り上げ構える。
そんなこと関係ないのだ。
彼は自分の何百倍、何千倍の大きさの敵でも挑むのだから。
両腕の鎌が彼の命を導くのだから。