「そんなこともないと思うけど…?
でも星来にはもっと自分を大切にしてもらわないと困るな…
自分が一体どれほど大切な人間なのか、まるで分かっていない。」

「ああ。」

「分かってないから…あんな風に動けるんだ…。」

「……。」

「ってオレら、もう若くないなー
こんなこと考えちゃってる時点でさ。
もう『頭より先に手が出る』なんてことないし。
どんどん小さな人間になっていくね。年とると。」

「…ああ。」

「ごめんね、紫紀。
なんだかくだらない話に付き合わせちゃって。
ただ、共鳴石のことを紫紀と確認したかっただけなんだ。
今日は疲れたでしょ?早く休んで。」

「…お前の右腕の傷は平気なのか?」

「傷?何のこと?」

「バレていないとでも思ってるのか?」

「……バレてないだなんて思ってないよ。
…ほんっと…紫紀は昔から無駄に鋭いよね。
あーあ…せっかくバレないように気を配っていたのに…。」

「『ヒール』の能力は他人の傷は癒せても、自分の傷は癒せない。
早く星来に覚えてもらうんだな。」

「いいよ、オレなんかの傷はそのままで。
痛みを覚えておくためには丁度いい。」

「…次はディープオーシャンか?」

「うん。ここから一番近いからね。
じゃあ…おやすみ…紫紀。」





「『痛みを覚えておくためには丁度いい』…か。
俺たちは…いつまで痛みを覚えているつもりなんだろうな…白斗。」