その瞬間、頭の中に漂っていた白い霧があっという間に晴れていく気がした。

はっきりと顔が見える、記憶の中の男の子。



『あの日』もあたしは泣いていた。

退屈な話にうんざりして城を抜け出して、中庭まで来た。
花がとても綺麗に咲いていた時期だったから、それに夢中で背後から忍び寄るものに気付かなかった。

腕を掴まれ誘拐されそうになったあたし。

それを助けてくれたのは…

蒼い髪、蒼い目の男の子。

背は当時のあたしよりほんの少し大きいくらいで、決して逞しいとは言えない背中。

それでもあたしにはヒーローみたいに思えた。


相手は大の大人。
それでも男の子は怯むことなく、木刀を強く握ったまま、立ち向かっていった。




あっという間に目の前の敵が倒されていく姿を見つめながら、あたしはどこか怖くて泣いていた。

その涙をすくってくれたのが…その男の子だった。
















まるで…今日と同じように。