「わ…たし…の…こ…こ…ろを…よ…読んだ…のか…?」

「喋らないで。
あなたの心の声と会話が出来るから。
それに…治さなくちゃ…。」

「星来。」

「白斗さん?」

「無理だよ。それこそ星来の命と引き換えだ。
それは出来ない。」

「は…離してください。」

「ダメだよ、星来。
何のためにセリユがオレたちをここに連れて来てくれたと思ってるの?」

「でもっ…。」



泉臣白斗の言う通りだ。
ここで姫が自分の命と引き替えに私を救っても、何の意味もない。

…守らなくてはならないと思った。
皆に愛された、この姫君のことを。

それに私は知っていた。おそらくこうなるであろうこと。
そしてそれを知っていながらも回廊に穴を開けたのだ。
この姫君を救うために。
いや、戦士たちに救ってもらうために。

だからいいんだ。
私のことを抱き寄せたりするんじゃない。
血の赤さは姫君には似合わない。

最期に本物の愛を見せてくれた。
現実を見つめられないで、偽りの愛にしがみついていた愚かな私を救ってくれた。

だから私は返しただけだ。
そのお礼に。

私は目を閉じた。

これで終わりだ。もう全て…。


そう思ったときだった。





「リターン。」