広い部屋にあたしと蒼刃さんだけが残る。
腕の傷が痛々しくて、あたしは口を開いた。


「その傷…大丈夫?」

「あぁ…なんでもねぇよ、こんな傷。
それよりお前はケガしてねぇか?」

「あたしは…全然大丈夫。
って、ちょっと…!その腕の傷は何でもなくないわよ!見せて!」

「触んな!」


そう言われたけれど、あたしはなんだかそのままにしておけなくてぎゅっとその腕を掴む。
よく見ると、…火傷の痕みたいなのがいくつもある。
本人が言っているほど軽い傷にはどうしても見えない。
あたしはそっと手を当てる。
傷に触れると、感情の代わりにその痛みが伝わってくる。


「火傷じゃない。」

「ああ。でも大したことねぇから騒ぐんじゃねぇ。」

「大したことあるっ!傷からは〝痛み〟が伝わってくるんだから。
あの…白斗さん…でしたっけ?」

「はい?何かな?」

「ここに手当てするものとかはないんですか?」

「うーん…あんまりないんだよねぇ…それが。」

「え!?じゃあこの傷…。」

「ちょっと代わってくれるかな?」

「えっと…はい…。」


あたしは素直に腕を離し、彼に預ける。


「何でもねぇって言ってんだろ?」

「『ヒール』で治すんだから別にいいでしょう?」

「お前に手間かけさせたくねぇ。
お前の力は緊急事態に使うもんだ。」

「このぐらいの傷ならそんなに魔力は必要ないよ。
さ、腕を出して。」