「何が起きたんですか?」
娘の質問にどうしたものかと迷いながら、
「階段を見る限り…上の建物が崩れたみたいだ」
娘は息をのむ。
それはそうだろう。
それが事実なら―まぁ、その通りなのだが―生き埋めだ。

「君はなんでここに?」
せっかくなので質問を返す。

娘はもじもじと動いた後、ためらいがちに答える。
「……家出…です」

なるほど、家出をして駅に潜り込んだのか。

見捨てるわけにはいかないな。


「とりあえず、ここを出よう」
「出れるんですか」
見えないなら路線図は意味がないなと思いながら、
「隣の駅まで行けば」

娘を立たせようとすると、鈍い震動が襲った。
建物が崩れた音だろう。

掴んだ娘の手が震えている。

「大丈夫。地下は強いから。行こう」
声をかけて立たせてやる。