遠くから電車がやってくる。


当たり前だか、線路の上を通って。


田舎だからなのか、駅のホームにはほとんど人がいない。


走ってくる電車の少し上を見ると、真っ青な空が広がっており、雲という雲は見当たらない。


さっき自販機で買ったカップのジュースを飲みきった僕は、隣で電車を見つめる彼女の両手に包まれている空のカップを奪う。


「捨てておくよ」


昔は、こうしてゴミを捨ててあげるだけで笑顔で“ありがとう”と言ってくれていたのに、ここ何ヶ月は当たり前になってしまい、僕の顔すら見ない。


寂しいような、イラつくような、複雑な気持ち。


音をたてながら大げさに止まる電車。


ドアが開く。


その瞬間、駅に来てから合わなかった僕の目と彼女の目が合った。