『あたし……帰ります。』 「え??おい、金本!!」 言うが早いか、あたしは数学準備室を飛び出した。 先生の呼び止める声が聞こえてきたけど、聞こえないフリをして、あたしはただひたすら昇降口へと走る。 ごめんなさい。先生。 あたし、本当は気づいてたのかもしれない。 先生は他の男とは違うって。 健くんじゃないって。 だけどね、認めるのが怖かった。 自分の中に芽生えようとしてる気持ちに気づくのが怖かったの。