恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―



「それも見てたの……?」

「3-Cの臼井だろ、一緒にいたの」

「そうだけど、でもアレにはわけが、」

「肩を抱かれてたのにどんな理由があるんだよ」


藍川は淡々と、でもわずかに不機嫌そうな声で問いかける。

そのせいで、あたしは悪くないのになぜだか焦って説明するしかなくて。


「臼井くんのお母さん、今入院中なんだって。

だから臼井くんはお母さんの代わりに家事をして、弟と妹の面倒を見てるらしいんだけど、ちょっと疲れたって……。

それで、肩を貸して欲しいって言われて……。

でも、その時も急に臼井くんの持ってた缶コーヒーの缶が潰れて、コーヒーが臼井くんの服にかかっちゃって……」

「臼井の母親は確かに入院してたけど、もうとっくに退院してる。2ヶ月も前の話だろ。

入院の原因は盲腸。今は完治してる」

「え、盲腸……? っていうか、藍川、なんでそんな事知って……」

「桃井は人がよすぎる。だからそんなすぐ騙されて隙を狙われるんだろ」


祐ちゃんにも散々言われている事をはっきり言われて、返す言葉もない。


人がいいって言葉自体は、決して悪い言葉じゃないと思うのに。

こんなにも注意されるって事は、どうやらそれは昔の話らしい。