恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―



西に傾いた夕日が、強いオレンジ色の光で藍川の黒い髪を照らす。

穏やかに吹く風にさらさら流れていく、オレンジ色に染められた藍川の髪。

それがあまりにきれいで……。


見とれそうになっていた時、藍川がぴたりと足を止めた。

見つめていた事がバレたのかと思って焦ったけど、藍川の視線は違う方向を向いていて。


不思議に思っていると、藍川が言う。


「8日前、ここで何が起きたか覚えてるか?」

「え、ここでって……あ」


藍川が立ち止まった場所から見えるのは、学校から少しだけ離れた場所にある高架下。

いつもは素通りするだけのその場所で、8日前起こった事と言えば……。


「……見てたの?」


気まずく思いながら聞くと、藍川は無表情のまま答える。