「……魔法」
「そ。童話の中に色んなのがあるじゃん?
人魚を人間にする魔法だとか、お姫様が白鳥にされちゃう魔法だとか。
どれも愛を試すための魔法だし、くるみも何かかかってたりして」
ニヤニヤ笑いながら言う祐ちゃんは、完全にあたしをからかってる。
だけど、一方のあたしは……ただ、顔をしかめるだけだった。
『魔法』
そんな言葉さえも藍川になら似合ってしまうような気がするのは、あたしの気のせいなのかな。
藍川が普通の高校生じゃないような。
なんて、そんな漠然とした気持ちを持ってるなんて……。
やっぱりあたしはおかしいのかもしれない。
こんなに藍川の事ばかり考えちゃうのも、
気になっちゃうのも、
本当に、魔法のせいなんじゃ……なんて。
どうやらあたし1人にしかかかっていない魔法に悩まされながら、教室に戻った。



