恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―



「紫貴さま、連日お騒がせして申し訳ありません」


じっとその人を見ていたあたしの肩を、藍川がぐいっと抱き寄せる。

そしてその手に力をこめた。


腕の強さに藍川を見上げると、「大丈夫だから」と優しく微笑んだ後、男の人に視線を移した。


「元帥。何か用でも? もうお話なら終わったはずですが」


あまりに単刀直入に言うから、失礼にならないかハラハラする。

相手は膝までついてるのに。


……っていうか、膝つくとかって、藍川って本当にえらい立場なんだ。

人間の社会では、片膝ついて敬意を表すとかって、ずいぶん昔の話のような気がするけど。


「とりあえず膝を立てたらどうですか。

目立つのも嫌だし、第一、貴方は俺に敬意なんて払っていないはずですが」


藍川が言うと、男の人が立ち上がる。

藍川より少し小さいけど、でも170後半はある。


男の人の視線があたしを捉えて、品定めするように頭から足の爪先までじろっと動いたのが分かった。