記憶を取り戻したい。
だけど、取り戻したと同時に、今のあたしはいなくなるような気がして……。
不安が胸に広がる。
藍川が愛しそうに見つめてくれるのは嬉しい。
だけど、それは今のあたしにじゃなくて、違うあたしに向けられている気がして。
寂しさが広がる。
そんなあたしの頬に、藍川が手を伸ばす。
そして、顎を上げて無理やり目を合わせると、にこりと微笑んだ。
「どうでもいい」
「でもっ、」
「くるみはくるみだ。少しの記憶が抜けていても、そんなの関係ない。
お人好しで、責任感が強くて、逃げずにどこにでも飛びこんでいって……俺が逃げようとしても、どこまでも追いかけてくる。
自分がどんなにボロボロになっても、俺に手を伸ばす。
……何度でも」
微笑んだ藍川が、どこまでも優しく見つめてくるから胸が掴まれたみたいに苦しくなる。



