ワイシャツを握り締めた手に力を込めると、それに気付いた藍川が笑う。
「人間社会で生きていくためには学歴が必要だろ。高校ぐらい卒業しておかないと後で大変な目に遭う。
心配しなくても、くるみの前から突然消えたりしない」
「本当に……?」
「くるみを置いていくなんて、今の俺にできるわけないだろ。
俺の命は、くるみみたいなもんなんだから」
「あ……そっか。あたしの血しか飲めないんだっけ」
「そういう意味じゃない」
藍川が言おうとしている事が分かって、胸がぎゅっと苦しくなった。
藍川が愛しそうにあたしを見たりするから、余計に。
「……ねぇ、藍川は……やっぱりあたしに記憶を取り戻して欲しいよね」
目を伏せながら聞く。
それは、藍川がどんな顔をするのか、見たくなかったからかもしれない。



