恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―



「あたしの血を、吸った事があるって事……?」


その問いに藍川は微笑むだけだったけど、そんな笑みを見てある事を思い出す。


『あたしが忘れているのは、藍川の事……?』

そう聞いたあたしに、藍川は『……俺からは言えない』って答えた。


今まで、藍川が微笑んで誤魔化す事は、ふたつあった。


ヴァンパイアに関係する事と、あとひとつは……。

あたしの消えた記憶に関する事。


ヴァンパイアに関しての事は、もう誤魔化さないって言ってくれた。

っていう事は……。


今、藍川が微笑みで誤魔化したのは、あたしが聞いた事が記憶に関係しているからだ。


そして、誤魔化す必要があったって事は、つまり―――……。


ポケットの中に入ってるコンパクトサイズの手鏡を取り出す。

そして、髪を持ち上げて自分の首筋をじっと観察した。