何かを思い出しているのか、柔らかい表情を浮かべる藍川。
明るくなった教室が、余計にそう見せるのかもしれない。
そんな顔をじっと見つめてから、ゆっくりと聞く。
「藍川は?」
純粋なヴァンパイアと、移り気なヴァンパイア、どっちなんだろう。
今までの藍川を見てると、後者だなんて事は考えられないし……考えたくないけど。
見つめる先で、藍川が微笑む。
「さぁ」
「さぁ、って……」
「―――だけど、もしも俺が移り気なヴァンパイアだったら。
とっくにくるみ以外の人間の首に牙を立ててる」
「……どういう、意味?」
藍川は、わずかに眉を寄せて微笑んで答える。
「俺は親父以上に執着がひどいから。
一度くるみの血の味をしめたら……、他の人間の血なんか吸えない」
移り気だったら他の人間の首に牙を立ててる、なんて……。
そんな言い方、まるでもうあたしの血を吸ったみたいに聞こえる。
あたしの血を吸った事があるから、だからもう他の人の血を吸えないって……。
そう聞こえる。



