「分からない。そうだったのかもしれないし……吸血衝動なんて感じないほどに、母さんを失った暗闇に呑み込まれてたのかもしれないし。
どんな思いから母さんの後を追ったのかは、俺にも……誰にも分からない」
「……純粋なんだね。ヴァンパイアって」
自然と漏れた言葉だった。
そんなにも深い愛情を持って、ひとりの人を想っていたなんて。
藍川は「人間」と「ヴァンパイア」の間に一線を引くような事をよく言ってたけど、でも、純粋な想いは変わらない。
人間も、ヴァンパイアも、一緒だ。
「でも、あたしも血ならなんでもいいんだと思ってた」
浅はかだったな、なんて反省の思いから言うと、藍川は微笑んで静かに首を振る。
「もちろん、移り気なヴァンパイアだっている。数から言えば少ないけど……でも、確実にいる。
多くのヴァンパイアが決まったひとりを想うけど……父さんは、そんな中でも周りが呆れられるくらいに一途で、純粋なヴァンパイアだった」



