「大変なんだって!」


言いながら肩で呼吸を整えている。
よほど大変な事が起きたのだろう。


「さっきまでいたけど。…どこ行った?」


泉がぐるっと周りを見る。
つられて心も見たが、奈桜はいない。


「あそこなんじゃない?」


DVDを観ていた碧が奏の方を向いて言った。


「どこ?」


「スタンド席の最上階。アイツ、コンサートの当日の朝はいつも一人で一番上の席からじっと何かを見てる。そうやって気持ち落ち着かせて、テンションを上げてるみたいだけど。だから…多分、そこにいると思う」


「サンキュ。じゃあ、行って来る」


碧に礼を言うと、慌てて出て行こうとした。


「ちょっと待てって。どうしたんだよ」


心の声が素早く呼び止めた。